『これ揉めそうだなあ』という協業は進めるべきか(大企業ースタートアップ)

今回はちょっと攻めた内容です。

事業開発や営業では永遠のテーマ。

「違和感」「いやな予感」がする企業との協業を、そのまま進めるべきか。

一般的には「自分の直感を信じてNo Go」とするのが正解であるとの言説が多い。私もそう思う。

事業開発・営業での失敗経験を積むほど、当然のごとく直感の精度は高くなる。嫌な予感を無視して進めば、たいていの場合は後になってから『ああ、やっぱりあの時に踏みとどまっておくべきだった』となる。嫌な予感がするということは、取引条件、協業内容、人間的な相性など、何らかのテンション・無理がかかっているということであり、晴れてスタートしてもそれらが解消されるわけではないからだ。違和感を抑えてGoとした結果、そのコラボレーションがある種の負債になってしまったことを、私も何度も経験してきた。

本記事では、「違和感を信じるべきか」みたいな従来語り尽くされてきたことではなく、「どんな企業が揉めやすいか」に踏み込んでみたい。私はスタートアップで、8年くらい事業開発をやってきて、製造業を中心に数多の大企業と協業してきた。振り返ってみると、揉めたケースにおいては一定の共通性があることが分かってきて、それを言語化してみたということだ。なお、違法性のある組織とか、コンプライアンスを遵守できていないなどは例外なので、本記事での対象にはしない。

また、当然だが、揉めがちだからといって、そのスタートアップや大企業が悪だという意味ではない。むしろ、世間一般からは「エクセレントカンパニー」と呼ばれている会社もある。あくまでも、スタートアップ ー 大企業間のコラボレーションに限った話であることはご容赦いただきたい。

目次

スタートアップと大企業は正反対の生存戦略をもつ

そもそも、スタートアップと大企業というのは対極の生存戦略をもっている。スタートアップはリスクと新規性を好み、大企業は安定と一般性を好む。社内ルールからマインドまで、双方には大きな隔たりがある。

スタートアップの多くは、独自技術とか、新規性の高いビジネスモデル、挑戦的なコンセプト、スタートアップとしてのフットワークの軽さなど、何らかの強みを武器に、大企業とのコラボレーションを構築しようとする。大企業がもつブランド、商流、資金、製造力など、自らには無いものとの組み合わせにメリットがあるからだ。

一方、大企業からすればスタートアップの製品・技術は未完成に見えることがほとんどであるため、大企業がスタートアップの不完全性を受け入れない限り、協業によるリターンはなかなか得られない。本来、大企業の仕事とは事業をスケールさせ安定化させることのはずなので、リスクの化身のようなスタートアップとの付き合いは、大企業のもつ「安定化」の本能に大きく反する。商売を盤石化、安定化させることを前提に、体制、意思決定プロセス、研究開発方針、知財戦略などが定まっており、これらもまたスタートアップとは対極にある。スタートアップも、協業を実現するには、対面している担当者は実に多くの障害を越えてもらわなければならないことを理解し、そもそもリスクテイクしてもらうことが相手(大企業)のメリットになるかをよく考える必要がある。

だから、良いコラボレーション、良い信頼関係とは、双方の歩み寄り・相互理解によって生まれる。両社にこのような違いがあることを認識したうえで、揉めやすい大企業の特徴、揉めやすいスタートアップの特徴を言語化してみる。

揉めやすい大企業の特徴

自社のルールにはめようとする

スタートアップにとっても、ビジネスモデル、プライシング、知財など、事業として成立させるために譲れないポイントがあり、意図あって特定のビジネスモデルやスタンスをとっている。そのため、大企業に対しても、「当社はこのような考え方でやらせていただいております」とご説明するわけだが、揉めやすい大企業というのは、基本的にスタートアップの主張を聞きいれる余白が非常に少なく、価値観がぶつかり合うゼロサムゲームになってしまう。

『うちは一括払いしか対応できません、経理が許しません』

『知財が相手方に帰属する契約は、当社の法務は許しません』

『その内容では会社を説得できません』

上記の発言に共通するのは、窓口になっている方もまた、大企業社内のルールや力学にかなり縛られているということだ。その方自身も、先方社内で、上司や知財部、法務部から同様に詰められていると思われ、それをそのまま社外・下請けにも展開されている感がある。それだけ社内に相当のパワーを割かなければならない会社だということだ。それが「交渉の余地なし」という状況を生んでいる気がする。

会食や雑談などのシーンでもその傾向は現れ、このような方々はしばしば社内の話を社外に対しても頻繁にされる特徴があると思う。それだけストレスを抱えているのであれば気の毒に思うが、楽しそうに社内政治の話をされる方もいるので分からないものである。

この文脈なので悪口にしか聞こえないかもしれない。スタートアップから見れば「頑固」ということになるが、見る角度を変えれば、会社のあるべき姿やルールが明確であるだけとも言える。会社とは、再現よく儲かる型を定めて、ひたすら繰りかえすことが理想的なので、必ずしも悪いことではない。事実、当事者にとってはとても良い会社で、実際自社を愛してらっしゃる人も多いし、世間からエクセレントカンパニーと言われている会社も多い。

態度が横柄、一方的である

これは残念ながらフォローの余地はない。ビジネスシーンから淘汰されるべき方々だと思う。まるで下請けや子会社かのようにスタートアップと接する方がいるが、そもそも対等な関係を想定していないということであり、そのまま何らかの関係に移行すれば、付き合った後が大変であった。(別れるのも大変だった)

ちなみに、私自身は、同じような扱いを同じ会社の異なる社員から3回受けた時点で、再現性のある組織文化であるとし、その会社様のことは心の中でブラックリスト入りさせていただいているのはここだけの話である。繰り返しになるが、あくまでもスタートアップとの協業、という文脈におけるブラックリストであり、その会社様そのもののステータスや世間の評価とは分離されるものである。ただし、大企業の方々にご理解いただきたいのは、スタートアップ業界は世界の狭い村であることだ。異なるスタートアップでも、CEOや幹部同士でツーカーであることはよくあるし、「あの会社は気をつけろ」という悪評は一気に拡散する。

揉めやすいスタートアップの特徴

ストレートに言えない

スタートアップから提供される情報は、しばしば大企業にとっては困る、不都合なものであることも多い。リスクをとることがスタートアップのDNAなので、安定を求める大企業と一定ぶつかり合ってしまうのは当たり前である。

しかし、遅かれ早かれ伝えなければならないことなら、隠しても仕方がない。後出しするくらいなら、先に言った方が絶対に良い。それをハッキリと言えない方がスタートアップにも結構いる。

例えば価格オファーの場面。

『○○万円です(ビシッ)。』と言い切れない。

『○○万円”くらい”でやってます』と言う。

ごにょごにょっと言うことで、聞き手に『この人の意思はまだゆるいな』『”くらい”ということは、交渉の余地ありということ?』という印象を抱かせる。その結果、相手方からの値下げ要求を受け取りやすくなる。自社の価値は自分で決めなければならないし、何も悪いことはしていないのだから堂々と言わなければいけない。受け入れてもらえないなら、仕方がない。それが市場であり商売であると思う。

契約交渉にも、そのスタートアップの文化や体質が表れやすい。

どのような会社であれ、譲れないポイントはある。スタートアップは特にそれが明確であることも多い。しかし、揉めやすいスタートアップというのは、自社のポリシーや考えを明確に述べられない。後出しすることで『そんな大切なこと、なんで先に言ってくれなかったの?』『もう社内調整してしまったよ』という状況を招くことになる。

最後の例は、実現リスクに関する期待値調整だ。私は、スタートアップ事業開発には必須のスキルだと思う。

スタートアップの事業・プロダクトは、大企業から見れば未完成であることが多く、すなわち失敗リスクをはらんでいる。科学技術を取り扱う場合は特にそうだ。しかし、大企業との案件獲得を優先したくて、技術リスクを共有できない。期待値を上げられるだけ上げ、挙句の果てに失敗をすれば、当然のごとく揉めることになる。相手方の大企業担当者も、スタートアップの言い分を参考に、大企業社内の説得をしてしまっているからだ。いわゆる『事前に聞いてた話と違うじゃないか!』という状況だ。身に覚えのある方も多いのではないだろうか。

丁寧に話を聞かない、売りたい気持ちが出すぎている

顧客の課題を解決し、対価をいただくのが商売の基本であるなか、ソリューションを押し込みたいという気持ちが透けすぎな会社も多い。それ自体は、スタートアップとして実績や売上が欲しい気持ちはよく分かるのだが、要注意なのは顧客の話をよく聞いていない会社だ。なぜ課題が生じているのか、その課題は事業や経営にどのような不利益をもたらしているのか、それを解決したら顧客にとって何が嬉しいのか、なぜスタートアップに関心を持ってくれたのか。また、導入するにあたってのNG条件や懸念事項はないのか。顧客の言い分に一旦じっくり耳を傾けることは極めて重要なのに、先を急ぐように実務的、操作的な話に終始してしまう。これは真のパートナーとは言えない。

最後に

私個人としては、スタートアップが今後もたくさん生まれてほしいし、『どうやって売るか』というところにフォーカスして力になっていきたいと考えている。しかし、せっかくのコラボレーションが始まっても揉めてしまうと、双方にとって機会損失にしかならない。「炎上しそうだなあ」という嫌な予感を抱えて始まった案件は、ほとんどが炎上する。であれば、未然に防いだ方がお互いのためなのではないかと考え、思い切って書いてみた次第だ。

ご覧いただきありがとうございました。

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