ディープテック営業の初回商談、プレゼンは15分で

ディープテック営業における商談について、大まかなページ配分や構成案、商談や営業資料作成における留意点をご紹介したいと思います。

世間一般の営業って、こちらから一方的に話すのはせいぜい5分くらいで、その後はキャッチボールをしながら進めるのが多いと思います。では、ディープテックはなぜ15~20分も必要なのか。BtoBのお客様向けにプレゼンするケースを想定して考えてみたいと思います。

目次

こんな方におすすめ


・技術ベースの新しい製品について、BtoBの事業/技術紹介プレゼンをする役割を担っている方

・BtoB向けの技術プレゼンについて、以下のような悩みを持っている方
  - プレゼンが刺さっているように感じられない
  - 技術細部の質疑ばかりで、ビジネスの話にならない
  - せっかく決裁者レベルとの商談に持ち込めたのに、「現場と話してくれ」とたらい回しにあってしまう
  - 漠然と自信が持てない など

売り手側はどのくらい喋ってよいのか

巷の営業How to本では、しばしば以下のような教えを目にします。

ディープテック営業の初回面談でもこれらは成り立つのでしょうか?

相手に話させろ。イメージは、相手8割、自分2割だ。

私はNoだと思っています。

私も、事業開発を始めたての頃、この手の情報を目にしては「相手に8割話させよう」と何度も試みましたが、無理でした。ディープテック事業開発に携わるようになり8年が経った今でも、初回は私が3~4割は話す時間をいただいています。ディープテックは、一般商材に比べ、お客さんからは難解であり怪しくも見せるからです。

それでも、ひたすらご自分のターンとばかりに喋り続ける方がいますが、これは論外です。

ディープテックには社会を変える無限の可能性があります。用途もひとつではなく、数多くの用途が考えられます。メリットも当然ひとつではないのでしょう。だから、喋りたいことがたくさんあるお気持ちはよく分かります。でも、お客さんが考える余白も与えず、『こんな用途もあるんですよ』、『あんなメリットもあるんですよ』と畳みかけられたらどうでしょうか?

片想いの人に自分を好きになってほしいとき、自分のことばかりマシンガントークするでしょうか。『この人は自分のことばかりで、私には関心がないのだな』と思われるのは、恋愛も営業も同じだと思うのです。恋愛にはいろいろな形があるでしょうが、赤の他人の聞き役になって嬉しいお客さんは絶対にいません。

ましてや、聞いたことのない新しい科学原理や概念です。ディープテック営業の受け手(お客さん)の脳内は、普段よりも負荷がかかっています。だから、なるべくストレスをかけないよう、考えさせる時間をあげながら、全体を清らかな川のように流せるよう努力する必要があるのではないでしょうか。

なお、投資家向けのピッチ資料をそのままお客さんに転用している会社もありますが、これもお奨めしません。ピッチ資料は、投資家に投資したいと思わせるために構成された資料であり、お客さんに買いたいと思わせる内容や順序になっていません。経営陣のキラキラ経歴や、競合他社との比較、知財戦略などに貴重なプレゼン時間を割くのはもったいないです。スタートアップの世界をよく知る方が聞き手なら「使い回してるな」と気づきますし、必要以上に自己肯定感が高く見えるそうです。自ら損をするのはもったいない。

ちなみにここまで書いてきたことは、私はすべてやり、失敗してきたことです。。ということで、次は私自身の失敗談をお話します。

私の失敗経験 ~ディープテックスタートアップ事業開発1年目~

私は、大手化学メーカー研究職から、大学発スタートアップ事業開発へキャリアチェンジしました。事業開発といっても、やることは営業がすべての基本になっていきます。入社当時、営業初心者の私が何より先にやらねばならなかったことは、会社・技術紹介プレゼンの習得でした。

ディープテックスタートアップは、世の中にない新しい技術を提供します。
当時の私の頭の中は、「新しい技術なのだから、しっかり理論を説明して、相手に理解してもらわないと!」という意識が大半を占めていました。

当時、1時間の商談の流れは、以下のようなものだったと記憶しています。

なんとプレゼンだけで40分も要していたのです。あれはプレゼンというより、授業や講演と呼ばれるものでした。

今思えば、地獄のような面談です。多くの方から嫌われたでしょう。
私のプレゼン目的は、相手の困りごとがどのように解決されるかを伝えることではなく、「相手に技術・原理を理解させたと自分が満足すること」だったのだろうと思います。

営業初心者の当時の私にとって、学会での一方向的な講演だけが、私の知るプレゼンテーションだったのです。会社や当時のご面談相手には本当に申し訳なかったと思います。当然、成果は上がりませんでしたが、あの日々があって今の私があります。

なお、ここまで申し上げてきたことは、非ディープテックの商談や中途採用のカジュアル面談などでも同じです。面談冒頭から30分くらいのプレゼンを一方的に披露くださる方がいますが、私はその時点ですごく辛いし「もうご縁はないかもな」と思っていました。

どうすればいいか?

難解で怪しく見えるディープテックについて、お客さんに適度に理解いただき、なおかつ負荷をかけないプレゼン時間は15分だと思います。ここからは、普段私が行っているプレゼンの構成や心がけていることを説明します。

ケース1(マイクロ波化学バージョン)

私が好む初回相談フォーマットをご紹介します。以下の例は、マイクロ波化学株式会社様が展開している凍結乾燥装置について、TechBizでプレゼン資料化したものですが、図中にある①~⑧のパーツは必ず含むようにしています。

月並みで恐縮ですが、最も重視しているのは製品スペックではなく、「顧客の事業・経営課題をどのように変化させるか」です。

ナノスケールの均質な粒子です

反応速度が10倍です

これらは製品スペックにすぎません。スペックは何かを成すための手段にすぎません。そこで、次のように、お客さんの課題がどのように変化するのかに翻訳すべきではないでしょうか。

御社が半導体市場に新規参入するにあたり、他社にない武器をお探しだったと思います。これは競争力の源泉になりえます。

製造コストの大半を、設備の減価償却費が占めているとお聞きしました。反応速度が一桁上がれば、億円単位のインパクトを得られませんか。

お相手がその道の専門家であったり現場に近い方なら、スペックを伝えるだけで刺さることもあるでしょう。しかし、営業の目的は、最終的にはエスカレーション(一個人では判断や対処が難しい事案について上長の判断を仰ぐこと)してもらい、現場からは遠くにいる決裁者・責任者に投資価値を感じてもらうことです。決裁者たちは、日頃から数多の決裁案件や相談事を抱え、頭の中はパンパンになった状態で商談に来ます。また立場上、現場の仕事を奪うわけにもいきません。そのため、細かなスペックの話となれば「現場でやっといて」と言わざるを得ません。彼らとの会話に持ち込むためには、彼らの視座や言語で話をする必要があるということです。

ケース2(イーセップバージョン)

次の例は、イーセップ株式会社様が展開している膜分離技術について、同じくTechBizがプレゼン資料化したものです。順番は変わるものの、構成している8パーツはマイクロ波化学様と変わりません。1枚10秒~1分くらいのイメージで、計15分の構成としています。

プレゼンの締めには、協業いただく際の流れなど、具体的なNext actionに繋がるような導線を作ってあげるとよいでしょう。何の案内もないと、聞き手はどうすれば良いか分からないからです。

その他の細かなコツ

スライド構成以外に私が気を付けていることは次のとおりです。私自身も、いろいろな書籍や周りの上手い方々を参考にして、少しずつ学んできました。私もまだまだ勉強中ですが、特に効果的だったものを抜粋してご紹介します。

  1. 抽象から具体の順番で展開する。なるべく行ったり来たりしない。
  2. 全体から詳細の順番で展開する。同上。
  3. 技術的な強みは、上位概念化、抽象化して表現する。
  4. 技術的な専門語句は避ける。
  5. 極力、一色だけで作る。大事なポイントは二色目で表現。色の組み合わせは綺麗に。
  6. 四角形を組み合わせてデザインする。
  7. AIのニオイを残さない(ちなみに私は今もすべて手作りです)

詳細は、「秒で使えるパワポ術(豊間根青地著、角川書店、2022年)」がとてもおすすめです。細かいことですが、人間は違和感を感じたときに思考が止まる傾向があります。極力違和感を感じさせないように、配色や配置、情報量など、努力でなんとかできることは改善するのがよいと思います。

最後に

ここまで、私自身が大事にしていることをご説明してきました。最後にお伝えしたいのは、相手は人間であり、商談は人間同士の会話であるということです。これが、私が大事にしていることすべての原点になっています。

そして、新しい概念、新しい技術を一度で分かってもらおうとはしないことです。お客さんはあなたの会社の社員ではなく、当然それぞれ自分のお仕事を持っているので、期待するほど興味は持ってくれていません。その前提でいかにお客さんの関心やロイヤリティを高めていくか。私は、ウェビナー・SNSなどによる「継続的な」発信が解決策になると思っています。TechBizでは、営業資料作成だけでなくウェビナー実行支援等も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

ご覧いただきありがとうございました。

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