事業開発職ほど、「ストレートに伝える力」が武器になると思う理由

目次

はじめに

私は現在38歳。大企業で研究開発を7年、スタートアップで事業開発を8年経験してきました。

どちらの世界にも身を置き、多くの仲間や上司、お客様と仕事をしてきた結果、ひとつ強く感じていることがあります。

それは、

「ストレートに伝えられること」

の重要性・希少性です。

もちろん、物事の伝え方には人それぞれのスタイルがあります。直接的な表現にも間接的な表現にも良さがありますし、どちらかが絶対的に正しいという話ではありません。また、ここで言う「ストレート」とは、相手を傷つけることや攻撃的な発言をすることではありません。

私が言いたいのは、ビジネスシーンにおいて、

  • 自分の考えや立場を明確に伝えること
  • 質問に対して正面から答えること
  • 曖昧なまま放置しないこと

つまり、主には自分の心の中にあることをいかに勇気をもって明かすかということです。

「ストレートに言うのが怖かった」頃の私

実は私自身、若い頃は「ストレートに考えを明かす」ということが本当に苦手でした。単純に勇気がなかった、慣れていませんでした。例えば、次のようなシーンです。

① 商談における「出来る/出来ない」の回答

顧客:
「こんなことがやりたいんだけど、出来る?」

私:
「出来ます」

(実は結構難しいと思っているんだけど、出来るかもしれないし、言いにくいから黙っておこう)

・・・・後日。

顧客:
「『出来る』と仰っていましたよね。全然出来ないじゃないですか。」


② 販売価格の提示

顧客:
「おいくらですか?」

私:
「だいたい100万円くらいでやっています」

顧客:
「ということは、条件次第で安くなるんですか?」

私:
「いや、そういうことでもないんですが……」

顧客:
「(結局いくらなんだろう……)」


③ コラボレーション協議

相手:
「なぜ当社にお声がけいただいたんですか?」

私:
「御社の目指されている方向性が素晴らしいと思いまして……」

相手:
「ありがとうございます。それで、具体的には?」

私:
「……いえ、ですから御社のご活躍を拝見しておりまして、ぜひご一緒できたらと」

本当は、

「御社が持たれている販路と当社の技術でシナジーを生めると思うのです」

などと言えば良かっただけでした。


④ 社内での役割分担

同僚:
「勝手に進める方向でお客さんと話すのやめてもらえませんか?」

私:
「メールにはCCしていましたし、上司も前向きな感じだったので……」

同僚:
「担当はあなたですよね?相談してほしかったです。」

私:
「申し訳ありません……」

今振り返ると、

「反対されるのが怖かった」

ただそれだけだったように思います。


挙げ始めればキリがありません。

今思い出しても胃が痛くなるような失敗ばかりですが、当時の私はさまざまなところで炎上を起こし、そのたびに上司に助けてもらっていました。

しかし今振り返ると、その原因は意外にシンプルです。

私は自分が傷つくことを恐れるあまり、

自分の考えを明確に伝えることから逃げてしまっていた

のです。


なぜ事業開発ではストレートさが重要なのか

事業開発という仕事は、答えのないものを前に進める仕事

だと思っています。

顧客は誰なのか。

どの市場を狙うのか。

価格はいくらか。

どんな事業モデルにするのか。

どの企業と組むのか。

正解はありません。すべて仮説ですし、正解は自分で決める世界なのです。

当然、ひとりきりで道を作る必要はありません。

仲間と一緒に作るのですが、だからこそ重要になるのは、

各人が何を考えているのかを明確にすること

だと思うのです。

賛成なのか。反対なのか。

懸念しているのか。乗り気なのか。判断できないのか。

それが見えないままでは議論は前進しません。


さらに事業開発は、多くのステークホルダーのハブになります。

顧客。

研究開発部門。

製造部門。

品質保証部門。

経営陣。

投資家。

協業先。

全員が異なる立場、専門性、思い込みなどのメガネを通して物事を見ています。それぞれが異なる利害や価値観を持っています。

だからこそ、

「なんとなく分かってくれるだろう」

というコミュニケーションは機能しません。

自分の考えや立場を言葉にして伝えることが必要になります。


核心に触れる会話を避けない

以前、ある大学の先生から起業について相談を受けたことがあります。その先生は長年研究を続けてこられた技術を社会実装したいと考えておられました。

「自分が生きているうちに、この技術を世の中に出したい。もう用途も目をつけてるんだ。社長として資金を集めて、これを実現してくれる人を探したい。」

その想いは本当に素晴らしいものでした。

しかし、お話を伺いながら私はある懸念を抱きました。その先生は、技術を世に出したいという想いが非常にお強い一方で、経営パートナーの動機に関するイメージがやや弱かったのです。

そこで私は率直にお伝えしました。

「先生の想いはよく分かります。ただ、先生個人の想いを前面に出しすぎると、経営者候補には魅力が小さく見えて勿体ない気がします。」

「優秀な経営者ほど、自分の頭で事業を考えたいと思っています。」

「技術をどう社会に届けるかという余白を残した方が、むしろ良い出会いにつながる可能性があります。」

少し失礼かもしれないと思いましたし、怒るかもしれないなと思いながら話しました。

しかし、良い経営パートナーとの出会いは何より重要です。だからこそ遠回しな表現ではなく、率直にお伝えする必要があると思いました。

結果として、その先生は私の意見を前向きに受け止めてくださいました。

こうした経験を通じて思うのは、事業開発では時として、誰も触れたがらない核心に向き合う必要があるということです。


質問に正面から答える

もうひとつ重要なのは、質問に対して正面から答えることです。

これは簡単そうに見えて意外と難しい。

百戦錬磨といった方々でも、案外質問にちゃんと答えられていないことはよくあると思いますが、質問者が求めているのは、

質問への回答です。

自分が話したいことではありません。

例えば、

「できますか?」

と聞かれたら、

まず

「できます」あるいは「できません」

です。

理由はその後です。

「賛成ですか?」

と聞かれたら、

まず

「賛成です」あるいは「反対です」

です。

これだけでコミュニケーションの摩擦は大きく減ります。


最後に

若い頃の私は、

相手に嫌われることが怖くて、

曖昧な言葉ばかり使っていました。

しかし今振り返ると、

曖昧さは優しさではありませんでした。

むしろ相手に余計な解釈をさせ、

誤解や炎上を生む原因になっていました。

事業開発は、

答えのない世界で多くの人を巻き込みながら前に進む仕事です。

だからこそ、

自分の考えを伝えること。

質問に正面から答えること。

必要なときには核心に触れること。

それらは単なる話し方の問題ではなく、

事業を前に進めるための技術なのだと思います。

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